Muchos besos y pocos llantos

¡ Olé al patinaje artístico sobre hielo en España !   フィギュアスケート・スペインチーム応援ブログ。 スペインのフィギュアスケートに関する情報をぽつぽつと。更新不定期です。

 「仕事繁忙期につきこちらのブログは休眠状態」にするつもりでいたのに、続けて書いているのはなぜなんだ>私。

 昨年12月、ハビエル・フェルナンデス選手のホームページができました。その中のひとつという形でブログも始まっています。最新記事が1月21日付、ユーロの男子シングルが水曜日からということで「ユーロ一週間前」、つまり前記事の足の不調直前に書かれたということになります。訳を出すタイミングが前後してしまいました。

 ちなみに、ユーロに出発する日曜日に出た sport.es の記事も、前エントリー=DPAの取材記事とこのブログからの抜粋要約で構成されています(つまり新しい取材ではない)。

A una semana del Europeo de Estocolmo (←元記事リンク)

ストックホルムのヨーロッパ選手権まで一週間 

(2015年1月21日)

 2015年最初の大きな試合が始まるまであとわずか7日。今年の目標のひとつ、ユーロ三連覇がかかっている。簡単なことではないだろう。グランプリシリーズやバルセロナでのファイナルでわかったように、今年はロシアの選手たちがとても強くなってきているから、一瞬たりとも気が抜けない。前回ユーロで3年連続金メダルを獲得したスケーターはアレクサンドル・ファデーエフで、僕の生まれる前、1989年のことだ。

 トロントでのこの数週間は今年のプログラムのブラッシュアップに努めてきた。プログラムについては、前にも書いたけれどとても満足している。この数日、ショートを4回、フリーをさらに3回通し、その中で表現を改善したり、スピンをもっと速くしたりすることに集中した。実際、ほとんどとてもうまくいって、そのうち何回かはクリーンなプログラムをすべることができた。これでプログラムに大きな自信がついたので、ストックホルムへ向けての感触はとてもいい感じだ。

 今週の出来が待望の三回目の金メダルへの吉兆になるといいと思っている。


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 ということで、足の不調の前に書かれたブログなので、電話で語った内容がこのブログの状況を踏まえてのことだというのがよくわかりましたね。

 後は「スペインスケート艦隊(アルマーダ)いざユーロへ!率いるはハビエル・フェルナンデス」という Avance Deportivo の記事もあるのですが、時間が間に合えば。

 "更新不定期"というより、記事ひとつ上げただけで休止って、いくらなんでも酷すぎる。

 はい、誰より私自身がそう思っています。年も変わってしまいました。怒涛の2014年後半が過ぎ、2015年です。スペインフィギュアスケート界にとっては歴史に残るGPFバルセロナ大会、空前絶後の勢いでスペイン語新聞記事が出て嬉しい悲鳴でしたが、人間の体はひとつしかないということを改めて恨めしく思いました。

 前置き長くなりそうなので切り上げますが、訳を見直しはじめたら最後更新できないとよくわかったので、ほとんど手をいれずにアップします。読みにくい点ご容赦を。

 ヨーロッパ選手権を目前に控え、そろそろ出発前のハビの様子が出てくるかと思ったところにかけめぐった激震。ハビ負傷??!のニュースです。ということで、今日はこの記事をざっと訳。


元記事はこちら。

Javier Fernández se lesiona antes del Europeo: "No puedo ni andar, pero estaré"

掲載されたのはおなじみスポーツ日刊紙「マルカ」ですが、ニュースソースはDpa Madrid、つまりスペイン各紙に配信している、APと並ぶ通信社(ドイツ系)のマドリッド支局です。(その後「アス(AS)」にも同文の記事が掲載。)


 ハビエル・フェルナンデス、ユーロ前に負傷「歩くこともできないが、出場する」

*ヨーロッパ選手権は月曜に始まり、2月1日に終わる日程
*「日曜に移動する予定。基本的に問題はないだろうと思うが、なったばかりなので」と本人の説明

(DPAマドリッド/トロントとの通話、2015年1月22日18:07) ←スペイン時間で

 ハビエル・フェルナンデス選手は足を負傷し、ストックホルム開催のフィギュアスケートヨーロッパ選手権を前に数日練習できないことになった。競技は水曜からで、三連覇がかかっている。「昨夜怪我をして、今は歩くこともできないけど、一応ちゃんと出場するつもり」と、ヨーロッパ選手権2回優勝、世界選手権で2度の銅メダルに輝いたフェルナンデスはDPAに語った。

 「マッサージで、だったから、今日はどうなるか様子を見ないと。施術は足の裏、土踏まずのアーチの部分をやってもらったんだ。それが昨日の夜、理学療法士のところに行ったのがね。で、今日は歩くこともできない状態で」と、トロントから電話インタビューに答えた。

 ヨーロッパ選手権は月曜に始まり、2月1日に終わる。フェルナンデスの出場する男子シングルの競技は水曜日(ショート)と金曜日(フリー)に行われる。「月曜日に移動するつもり。基本的に何も問題ないだろうと思うけど、いためたばかりだから」と、カナダのトロントを拠点にしているフェルナンデスは説明した。

 しかし、心配していないと言い切った。「こういうのって深刻な何かが他にあるというのでなければ、たいてい二、三日で治るようなものだ。だからユーロに向けては心配していないよ、試合は来週だから」

 ソチオリンピック4位のフェルナンデスはけがの様子を見るために2日間は休養しなくてはならないだろうと考えている。「ハードな練習をしっかりしてきたけど、これでどうなるかわからない。きっと今日はもう絶対氷に乗れないし、明日も様子を見てどうなるか(=氷に乗れないかも)。そうなるとトレーニングと練習の計画が崩れるけど、これまでしっかり練習してきた。そこそこ回復すれば、出場するよ」とブライアン・オーサーの元で練習しているフェルナンデスは語った。

 フェルナンデスは3月末上海開催の世界選手権を今シーズンの大一番として控えている。まだ2018年平昌オリンピックについては考えていないと語った。「気楽に考えることにしているよ。3年以上ある、けっこう長い期間だから。オリンピックには出たいけど、それより一年一年、一シーズン一シーズンを大事に積み重ねていくよ」

「もしも大きな期待をして、もしかして届かなかったら、すごくがっくりくるかもしれない。スポーツで好成績をおさめる目標を達成できないのは、かなり大きなショックだよ」と、フェルナンデスは語った。1992年アルベールビルオリンピック、スラロームでブランカ・フェルナンデス・オチョアの獲得した銅メダル以来冬季五輪のメダルに縁のないスペインにとって、メダル不足に終止符を打つ切り札だ。

 フェルナンデス選手がもっと技術を磨こうとスペインを出たのは17歳のこと。アメリカ合衆国で一年、ヨーロッパ各地で一年を過ごし、トロントに落ち着いた。冬、シーズン中はトロントで暮らしている。「6~7ヶ月はトロントにいるよ。スペインにいるのは一ヵ月半」

 自分の国で練習したいのはやまやまだが、今のところ現実的な選択ではないのはわかっている。スペインでは好成績をおさめるのに必要な条件が揃わないからだ。「確かに他の国のほうが設備が整っているからね。僕もできることならスペインで練習できればいいと思う。ずっと遠い国にいるのとはやっぱり違う。望むのは地元でトレーニングできることだよね」「僕がスペインに移るには、コーチにも一緒に来てもらわなきゃいけない。もしコーチが来るなんてなったら、教え子のスケーターが10人も15人も来なきゃいけなくなっちゃうよ」


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 さて。

 マッサージってそんな、と思われました? 私もそう思います。

 記者が何と言って質問したのかが書かれていないので、マッサージそのものが原因なのか、それとも調子が悪くてマッサージに行ったら翌日もっとつらくなったのか、はっきりしない言い方になっています。電話インタビュウということ、それを文字に起こしていること(母音一つ聞き違えたら、簡単に意味がひっくりかえります)。何より、インタビュウ取材なのに質問が書かれていない! スペイン語って基本的に主語は動詞の活用で示すだけなので、質問がないと何を主語にして答えているのか、想像するしかないのです。
(余談ですが「理学療法士」と直訳しておきましたが、日本の「整体」的な感覚ではないかと思います……)
(「負傷」「けが」と言っているのは記者だけで、本人はけがしたとは言っていないですね、最初の段落は記者のまとめた言い換え。)

 ということで、第三者の立場から客観的な説明があれば一番いいのですが。一応、本人の口からはあまり深刻ではなく、すぐ治ると思われる状態だ、ということだけ伝わりました(^^;。
(サッカー翻訳やってきた経験から、スペイン語圏選手本人の談話だけだと状況がはっきりしないのはよくわかる……)

 おそらく、DPAの記者はユーロ直前(試合日一週間前)の「調子はどう?」ということで本人に取材電話をかけてみた。ところが今日は足が痛くて練習していないという、よしこれは見出しにしなくては!……というなりゆきだったのではないでしょうか。本来のインタビュウの目的は、ユーロに向けての調子と、記事後半の内容だったと思われます。(しかし「期待しすぎると」のくだり、冬季メダルのプレッシャーとソチ後の傷心はいかばかりかと思うと胸が痛みます)

 とにかく本人の見込みどおりすぐ回復して、これまで積み重ねてきた練習がむくわれ、試合で良い結果が出せるよう、心から祈っています。

 ユーロ出場スペインチーム全員がんばれ!




追記:
……と思っていたらさっき(日本時間で25日AM7時過ぎ)、本人から「大丈夫」のツイートが。↓ よかった~。

https://twitter.com/javierfernandez/status/559112956903161856

 サラ・ウルタード選手(アイスダンス)のブログから、2014年7月13日付の記事を紹介します。

(なお、翻訳にあたってはサラ本人から許可を受けています。無断転載はご遠慮ください)

元記事はこちら。
Pretemporada 2014-2015, programas y novedades.

2014-15シーズン開幕直前・プログラムとニュース

2014年7月13日
 わたしたちはまた新たなスタートを切りました。とてもいい感じでシーズンが始まっています。
 2014-2015シーズンについて。――ショートダンスの必須リズム(パターンダンス)にパソドブレ。シニアグランプリには2回アサイン。ヨーロッパ選手権には、スペインからアイスダンス2枠。グランプリファイナルがバルセローナで開催。冬季ユニバーシアードはグラナダで開催……。さらに、わたしたちのチームは人数が増えました。リヨンのスクールで教えていた名コーチ、ロマン・アグノエルがモントリオールに移り、スペイン2位のアイスダンスカップル、セリア・ロブレードとルイス・フェネーロも一緒に、すばらしい「M」に移ってくることになりました。「M」、といっても「めちゃくちゃ」のMじゃなくて、「モントリオール」のM、ね。
 今季はスペインのフィギュアスケート界にとってチャンスでいっぱいのシーズンです。たとえば今季のショートダンス。SDで演じるリズムにパソドブレやフラメンコが指定されているということひとつ取っても、新しいプログラムを作る時、アイスダンスのカテゴリーのスケーター全員に、この音楽やリズム、つまりスペインのリズムに関心を向けてもらえるということ。わたしの国の音楽と文化の美しさ、豊かさを世界中に知ってもらえるということです。オレー、やったね!
 そこで、アドリとわたしにとっっては、必然的に責任重大ということになります。わたしたちのルーツをできるだけ本物の形で表現するのは、わたしたちの腕前次第。全力で願いを込めての挑戦です。もともと純粋にスペイン的なものをやりたいと思っていたし、今季、しっかり向き合う覚悟はできています。


 そのために、どんな曲を選ぶかがとても大切でした。(ショートダンスに)わたしたちが選んだ曲は、パソドブレのパートに「Tercio de Quites (テルシオ・デ・キーテス)」、そしてフラメンコのパートにパコ・デ・ルシアの「Almoraima (アルモライマ)」とミゲル・ポベダの「Alfileres de Colores (アルフィレーレス・デ・コローレス:色とりどりのピン)」。この3曲で、闘牛と闘牛士の関係を表現するプログラムを作りました。闘牛場の中だけでなく、場外も含めて。スペイン国立バレエ団監督アントニオ・ナハーロの振り付けのおかげで100%オリジナルの、スペイン的なプログラムになりました。ナハーロとの振り付けは楽しい作業でした。夢がすっかりかなえられたんです。 
 曲と曲のつながりはとても大切です。お気付きでしょうか、全部闘牛に関係のある曲です。そしてパコ・デ・ルシアの「アルモライマ」は今年2月25日に亡くなったアーティスト、パコへのトリビュートになります。


 フリーダンスについては、話が別です。映画『つぐない』のサウンドトラックと、シルク・ド・ソレイユの愛についての詩を使って、独自の物語を創り、"The three faces of Love"、つまり「愛の3つの顔」と名付けました。そのうち、もっと詳しくストーリーを説明します……。わたしは本当にこの音楽が気に入っていて、これまで滑ってきたのとは違うものになっています。ハッピーエンドで、去年のプログラムのようにドラマティックで悲痛な終わり方ではありません。


 この2つのプログラムができて、万全の態勢で2014-2015のプレシーズンに入りました。

 良い始まりになりますように!
 楽しんで、
 サラより
 
 ――そして夢見る腕には、色とりどりのピンを。(※「アルフィレーレス・デ・コローレス」の一節より)


(ブログ記事翻訳ここまで)
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 サラ・ウルタード&アドリアー・ディアスは、スペイン代表としてISUの競技会に出場した初めてのアイスダンス選手。初出場のソチオリンピックで13位という成績は、スペインのフィギュアスケート界の歴史に残る記録です。
 今、スペインのフィギュアスケート選手達はそれぞれスペインでのフィギュアスケートの認知度アップ目指して一生懸命。そのことはわかっていたんですが、このブログを読んで今シーズンに賭けるサラの意気込み、覚悟、強い思いに打たれました。


 記事にあるとおり、現在サラ&アドリアー組の拠点はモントリオール(2011年12月から)。マリー=フランス・デュブレイユとパトリス・ローゾン(トリノオリンピックのアイスダンス、カナダ代表)に師事しています。そして今回、フランスのロマン・アグノエルが指導者としてチームに加わったニュース。

◇ Haguenauer finds new horizons in Canada (World Figure Skating)


 さらに、アグノエルについていたサラ達の後輩、セリア・ロブレード&ルイス・フェネーロ組もモントリオールへ。12-13まではジュニアで、昨シーズンシニアに上がってスペイン国内2位になりました(と言ってもスペイン選手権のアイスダンス部門出場はこの二組だけ)。サラ&アドリアが出てくるまで国内選手権でアイスダンスの種目は実施されなかったわけですから、もちろんスペイン国内に指導者もいない状況。この二組がカナダを拠点にレベルアップを目指すのは大きいですね。

◇ La danza se moverá a ritmo de pasodoble la próxima temporada (RTVE)

 ↑この5月のRTVE(スペイン国営放送)、アントニオ・ナハーロのアイスダンス選手向けクルシージョについてのニュース映像で、サラと一緒にインタビュウを受けているのがセリアです(50秒頃)。

 スペイン・フィギュアスケート界にとってチャンスの年。GPFのバルセロナ開催だけでなく、ユニバーシアードのグラナダ開催、というのもあるんですね。(実はグラナダには雪が降る、という話はスペイン人に聞いたことがあります。なにしろシエラ・ネバーダって「雪山」ってことですからね!)

 そしてもちろん、アイスダンスでは今年のショートダンスの規定が!


 ――というわけで、ブログを始める動機となった本題に移ります(前置き長いよ:笑)



【今季のショートダンス】

 パターンダンスにパソ・ドブレ、クリエイティブパートがスパニッシュと、今季は絶対アイスダンスに注目、と始まる前から思っていたのですが、何と言ってもスペインの選手。選んだ曲の組み合わせといい、アーティストといい、もうっ! 本当に今からわくわくします。


 最初曲名情報だけ流れたので、「パコにミゲル・ポベダ!? しかも、もしかしてパソドブレと合わせて闘牛つながり??」とびっくりしたのですが(だってパコ・デ・ルシアはともかく、まさかフィギュアスケートでミゲル・ポベダが聴けると思わなかったですよ長生きはするもんじゃてゲホゲホ)

 いや、本当に、サラ本人が書いているとおり「闘牛つながり」で合っていたのでした。


1)パソ・ドブレ「Tercio de Quites テルシオ・デ・キーテス」


 そもそも「パソ・ドブレ」そのものが歩兵隊の行進曲に由来し、闘牛場の入場行進に演奏されるものなので(時には、素晴らしい技が演じられている時にも鳴ります)、曲を聴いただけで闘牛のイメージが浮かんでくるわけです。闘牛場に集まった観客の心を高揚させるための曲。そういえば、スペインのサッカー場でスタジアム付きの楽隊が試合開始前にパソ・ドブレを演奏するのを聞いたこともあります。

 ”テルシオ・デ・キーテス” というのは、闘牛の進行段階の一場面、その途中の技のひとつです。闘牛にはあまり詳しいわけではないので調べ直しましたが、スペインの闘牛は大まかに(1)槍突き、(2)銛打ち、(3)とどめを刺す――という三段階(三場)で進行し、それぞれを”テルシオ”(三分の一)と表現します。”テルシオ・デ・キーテス”は別名 Suerte de capote(スエルテ・デ・カポーテ:カポーテの技)とも言い、(1)でピカドール(馬に乗った槍打ち役)が登場する前に闘牛士がカポーテ(表がピンク、裏が黄色のケープ)を翻して牛をかわし(パセ)、牛の速さと力を見る技のこと。もしかしたら私達が「スペインの闘牛」と聞いた時に真っ先にイメージする技かもしれませんね。「闘牛ごっこ」をするときに(って、しませんか(^^;)、闘牛士役が布をひらひらさせて突っ込んでくる牛役を避ける、アレです。


2)パコ・デ・ルシア「Almoraima アルモライマ」



 アルモライマは1976年発表の同題アルバムの1曲目。ブレリーアです。ある意味パコの代名詞的な曲のひとつ、だと私は思っています。

 アルモライマ、というのはパコの生まれたアルへシラス近郊の農園の名前だそう。

 スペインの民主化(フランコ体制終了)というタイミングで発表されたこのアルバム、フラメンコ界に衝撃をもたらした傑作です。

 パコの名前を聞いた瞬間、顔(というかギターを抱えたポートレート)と一緒にテーマ曲のように頭の中に鳴るのがこの曲のイントロです私……デンデデンンデデンデ……。ワタクシが子供の頃、フラメンコといえばパコ・デ・ルシアだったのですよ。あ、今何歳かは追求しないでくださいまし。
 ……えー、とにかく。記事中にあるように、2月に亡くなったパコへの追悼の意味も込められている、と聞くと泣けます。これでサラとアドリアが滑ってるところとか、想像しただけで涙の池ができます。


 だったら、この曲と闘牛との関係って??

 これは、あくまでも私の推測なのですが――アルバム『アルモライマ』の前年に発表されたアルバムに、『アルテ・イ・マヘスター』というカマロンとパコ・デ・ルシアの一枚があります。これはカマロンの親友の闘牛士、クーロ・ロメーロに捧げたもの。この中で、パコはアルモライマのファルセータを弾いています。(この件、後で時間ができたらもうちょっと確認してみます)







3)ミゲル・ポベダ「Alfileres de Colores アルフィレーレス・デ・コローレス」





 ミゲル・ポベダですよ。いやー、若手だと思ってましたがいつの間にか彼も大スターに。ええ、「人気はあるけど……」って意見はわかります。いいの、渋くて枯れたフラメンコも大好きだけど、ギラギラしてかっこいいのも好きなのっ。

 昨年NHKで放送された「今井翼×サムライ支倉 大いなる旅への挑戦」という番組、ご覧になった方はいらっしゃいますか?

日本スペイン交流400周年開幕記念音楽会

昨年2013年が、支倉常長が慶長遣欧使節としてサン・フアン・バウティスタ号に乗って石巻からスペインに行って400年、ということで「日本スペイン交流200周年」記念事業が続いています。この番組は、そのオープニングイベントで今井翼が支倉役に扮した舞台を作りあげる様子を追ったドキュメンタリー。
 このコンサートで歌ったのがミゲル・ポベダです。おそらく支倉常長の話はほとんど知らなかった筈なのに、慌しいスケジュールの中リハに来て、即興でピアニストとどんどん曲を作っていく、その凄さにしびれました。



 また、カルロス・サウラ監督の『フラメンコ・フラメンコ』(2010)での存在感も、記憶に新しいところ。
 土砂降りの雨の中、という演出でエバ・ジェルバブエナの踊りに合わせて歌ったNana(子守歌、という形式だけどそれどころか男女のどろどろした雰囲気……!)もいいですが、コプラ・ポル・ブレリーア(ブレリア風のコプラ)のEsos cuatro capotes が良かった! これもcapotes、とタイトルに入っているように、闘牛士のケープがモチーフなのですが、伝説的なフラメンコの巨匠達を闘牛士のケープになぞらえて称える歌です。

 さてさて、脱線はこのくらいにして、 Alfileres de colores に戻らなくては。

 歌詞はこんな感じ。

Cuando al vuelo tu capote
pinta verónica al trote
del toro en el redondel.
Parece la Maestranza
una academia de danza
o un cortijo de Jerez.
Y cuando la aguja del toro
pinta el traje grana y oro
como ensartando un clavel
en tus brazos soñadores
alfileres de colores
un ole quieren coser.
Como mimbre canastero
se mece tu cuerpo entero
mientras que pasa el buré.
El vuelo de tu muleta
es el verso de un poeta
que quiere al cielo embeber.
Que bronce de la escultura
del toro por la cintura
y tu muñeca un cincel
Y en tus brazos soñadores
alfileres de colores
ole con ole y olé.



 お前のカポーテが翻り
 闘牛場の砂の上を駆ける牛に
 ベロニカの技が決まると
 マエストランサ闘牛場は
 まるで舞踊アカデミーか
 ヘレスの荘園邸宅のようになる
  ……(試訳:koto)

 という、闘牛士の優れた技を讃える歌です。


 verónica (ベロニカ)は、これも闘牛の技。カポーテを両手に持って行うパセのことを言います。
 Maestranza「マエストランサ」はセビージャの闘牛場ですね。こんなところ(wiki)。
Plaza de toros Real Maestranza

 フラメンコの歌詞って、口伝で作者不詳のものも多いのですが、これは一応わかっています。
Pedro Rivera ペドロ・リベーラ(パナマ人詩人・作家) が1978年に、Rafael de Paula ラファエル・デ・パウラという闘牛士の技にインスピレーションを得て書き上げたとされています。ちなみに、マエストランサ闘牛場で前述のクーロ・ロメーロとラファエル・デ・パウラの競演を見た直後のこととか。

http://elrincondeordonez.blogspot.jp/2009/10/alfileres-de-colores.html)
http://www.catasconarte.net/alfileres-de-colores/

 曲はDiego Carrasco ディエゴ・カラスコ。だから、動画でもディエゴ・カラスコとミゲル・ポベダの共演ライブの映像が多いです。男性バイラオールも好きだけど、こういうカンタオールやギタリスタがひとふし、さらっと踊ってみせるのも大好物。
 この動画の日付、2008年の映像だとすると、54年生まれのカラスコは54歳、73年生まれのミゲル・ポベダは35歳。まったく個性の違う二人の身のこなしも素敵なので、よろしかったらこちらも。



 さてそうなると、タイトルになっている、そしてサラの言葉の最後に引用されている「色とりどりのピン」って何? という疑問が沸いてくると思います。

 原詩でも一番核になる部分、そして詩人の真骨頂ともいえる趣向を凝らしたフレーズ。
 ここで私の解釈を書き始めると、また記事ひとつ分以上の長さになってしまうので(^^;、とりあえずサラがなぜここでこのフレーズを引用したか、だけ。

 一言で言えば、サラが夢に向かって努力し、結果を手にしたいと願っている、ということなのだと思います。色鮮やかな演技で、闘牛士のように「オレー!」を得たい。華々しい成績を収めることによって、スペインの国内で、フィギュアスケートというスポーツが認められるように、と。
 



【ナハーロと闘牛】

今期のSDの振り付けがアントニオ・ナハーロで、しかも闘牛がモチーフ、と聞いて思い出すプログラム。

 そう、スペイン国立バレエ団(Ballet Nacional de Espana)の看板演目のひとつ、《セビリア組曲》SUITE SEVILLAです。この中に、男性舞踊手が闘牛士、女性舞踊手が牛に扮して踊る曲があります。その名も「マエストランサ」、闘牛士と牛の関係を男女になぞらえたプログラム。2013年2月の日本公演でも上演されたので、ご記憶の方がいらしたら嬉しいな。この時の公演で、アントニオ・ナハーロ振付の演目はこの《セビリア組曲》だけだったんですよね。

こんな写真です。




 男女の踊り手によって生と死、愛と憎しみの対比が演じられる作品。コンテンポラリーはやや苦手な私ですが、強烈な印象が残りました。


 そして、この来日公演の際に、アントニオ・ナハーロはインタビュウで、またフィギュアの振付をやってみたいと語っていました。

 ショートダンス課題がパソ・ドブレ&バイレ・エスパニョールの今年、スペインのアイスダンスカップルのために、アントニオ・ナハーロが選んだ曲、そしてテーマ。
 
 スペインに闘牛とフラメンコだなんて、日本といえばフジヤマゲイシャ、みたいなものではありませんか。

 逃げも隠れもしない、変化球も使わない。真っ向からの直球勝負です。
 でもナハーロのことだから、きっとそれだけでは終わらない予感がします。だったら、ナハーロの本気を見せてもらおうじゃないか、と。サラとアドリアのプログラム、披露される日が待ち遠しいです。



※  フリーダンスの方は、後日サラが説明してくれるそうなので、その時を待ちたいと思います(ごめんなさい)。

 思いのほか長くなってしまいました。最後まで読んでくださってありがとうございました。

 今の状況でブログを始めて更新が続けられるのか、いや、そもそもこんなマイナーなテーマに需要はあるのか、先行き不透明なまま思いつきで始めてしまいました。


 今期アイスダンスのSD規定がパソドブレ&スパニッシュダンスということで、サラ&アドリア組のSDプログラム曲の話だけでもご紹介したいと思っています。

 フィギュアスケートに関してはお茶の間観戦組ですので、行き届かない点などあるかと思いますが、どうぞよろしくお願いします。
(記事がひとつだけで終わりませんように……)